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カスタム電源開発・設計 豆知識

2026.10.27

高圧電源の代表的な回路方式と特性の違い

「高圧電源に関して、そもそもどんな仕様で検討すればよいかわからない…」
「高圧電源を外部に依頼したいが、回路方式によって何が違うのかわからない…」

このようなお悩みはございませんか?

高圧電源とは、数kV以上の高電圧を発生させる電源で、一般的な24Vや48Vの電源では対応できない用途で必要とされます。高圧電源ではトランスの設計が性能を大きく左右し、カスタムトランスが必要になる場合もあります。トランスに求められる仕様は回路方式によって変わるため、回路方式の選定が品質に直結します。

本記事では、高圧電源の代表的な3つの方式(昇圧方式2種と駆動方式1種)と、それぞれの回路方式の特性の違いについて解説します。

 

高圧電源の代表的な3つの方式とは?

高圧電源の代表的な3つの方式をご紹介します。これらの方式は組み合わせて使われることも多く、互いの弱点を補うことができます。

① 高圧トランス単体方式

高圧トランス単体方式は、巻数比の大きい高圧トランスで直接高電圧まで昇圧し、2次側を整流して直流を得る方式です。倍電圧回路を使わないため、構成がシンプルです。
トランスを駆動する回路にはフライバック、フォワード、ブリッジなど複数の方式があり、扱える電力は駆動方式によって変わります。一般的なスイッチング電源の目安として、フライバック方式は200W程度まで(最大300W程度)、フルブリッジ方式は数kWの電力で用いられます。

一方で、高電圧を得るために2次巻数を増やすほど、トランスは大型化します。また、巻数の多い2次巻線には浮遊容量が生じ、1次側からは巻数比の2乗倍の大きな容量として見えます。スイッチングのたびにこの容量を充放電する電流が流れて損失となります。充放電の回数はスイッチング周波数に比例するため、周波数を上げるほど損失が増え、高周波化には限界があります。 なお、高圧トランス単体方式の代表例として、フライバックトランス回路があります。

図1. フライバックトランス回路

これは、スイッチング素子がオンの間に1次側コイルへエネルギーを蓄え、オフになると2次側へ放出して高電圧を得る仕組みで、約20~30kVの出力が可能です。部品点数が少なく安価に製作できる反面、損失が大きく、高電圧化に伴ってトランスが大型化するため、高圧電源
での採用は多くありません。

>>フライバックトランス回路:高圧電源開発・設計の基礎

 

②コッククロフト・ウォルトン回路

図2. コッククロフト・ウォルトン回路

コッククロフト・ウォルトン回路は、ダイオードとコンデンサを多段に組み合わせ、低電圧の交流を高電圧の直流に変換する回路です。段数を増やすことで、トランスの2次電圧を偶数倍に昇圧できます。高圧スイッチング電源に最も多用されている回路方式です。

例えば、トランスの2次電圧(ピーク値)が5kVの場合、12段(12倍)の構成とすれば理論上、約60kVが得られます。トランス単体で同じ電圧を得る場合に比べて2次電圧を低く抑えられる反面、負荷電流が増えるほど出力電圧が下がりやすいため、小電流の用途に向いていま
す。

この回路を高圧トランスの後段に組み合わせると(後述の共振型コンバータで駆動する構成も含む)、トランス単体で高電圧を作る必要がなくなり、高圧トランスの2次巻数と浮遊容量を大幅に減らせます。

>>高圧電源設計の基礎:コッククロフト・ウォルトン回路

 

③ 共振型コンバータ方式

共振型コンバータ方式は、LC共振を利用し、スイッチにかかる電圧がゼロになるタイミングで切り替えるZVS(ゼロ電圧スイッチング)などのソフトスイッチングによって、高圧トランスを駆動する方式です。昇圧の方式ではなく駆動の方式であるため、前述の高圧トランス
単体方式やコッククロフト・ウォルトン回路と組み合わせて使うことができます。

ソフトスイッチングはスイッチング損失とスイッチングノイズの低減を目的とした技術で、ZVSを適用するとスイッチング損失を大幅に低減し、高周波でも高効率に動作させることができます。

一般に、スイッチング周波数を高めるとトランスなどの受動部品を小型化できる反面、スイッチング損失は周波数に比例して増加します。共振型コンバータはこの損失を抑えながら高周波化できるため、高圧トランスの小型・軽量化に有効です。

X線装置などの高圧電源では、共振型コンバータで高圧トランスを駆動し、後段のコッククロフト・ウォルトン回路で昇圧する構成が用いられています。特に医療用X線装置では、一般的に20~150kVという広い範囲の出力が求められます。

ただし、広い負荷変動の中でソフトスイッチングを維持しつつ、高速応答とオーバーシュート抑制を両立させる設計は難しく、制御設計の難易度は高くなります。

高周波化のメリット・課題については、下記の記事で解説しています。

>>高速スイッチング化に伴うカスタム電源のノイズ対策

 

回路方式ごとの特性の違い

それぞれの方式は、高圧電源で「どんな課題を解決したいか」によって使い分けられます。

表1. 回路方式の特性比較

項目 ① 高圧トランス単体方式 ② コッククロフト・ウォルトン回路 ③ 共振型コンバータ方式
電圧範囲 約20~30kV
(フライバックトランス)
段数に応じて高電圧化
(例:5kV×12段で理論上約60kV)
組み合わせる昇圧方式に依存
(例:X線装置で20~150kV)
電流 比較的大きな出力電流に
対応しやすい
小電流向き
(段数増加で電圧降下大)
大電力(大電流)でも
高効率を保ちやすい
ノイズ(EMI) 多い
(ハードスイッチングの場合)
少ない
(回路自体はスイッチング動作をしない)
非常に少ない
(波形が滑らかなため)
サイズ・重量 トランスが大型化・重量化
しやすい
コンデンサの数が増え、
スペースが必要
トランスやヒートシンクを
小型化できる
主なメリット 構造がシンプルで
コストを抑えやすい
トランスへの電圧負担を
低く抑えられる
スイッチング損失を大幅に
低減でき、発熱を抑えられる

 

このように、それぞれの回路方式によって対応できる電圧・電流、ノイズ、電源のサイズが変わり、装置側の性能や筐体設計に影響します。

例えば、検出器に高電圧を供給する用途では、光電子増倍管のように増幅率が印加電圧のべき乗で変化するものもあるため、電圧変動の小ささが検出信号の安定性に直結します。また、どの回路方式を採用する場合でも、高電圧を扱う以上は放電への注意が欠かせません。具体的な対策としては、十分な絶縁距離の確保に加え、高圧部を絶縁材で覆うポッティングや、ポッティング材に気泡が残らないようにする脱泡処理などが挙げられます。

回路方式の選定にはこうした要素が複合的に関わるため、まずは必要な電圧・電流、許容できるリップル、搭載スペースなどの要求仕様を整理したうえで、電源メーカーに相談することを推奨します。

 

高圧電源の事例を一部ご紹介

事例①:画像診断装置用直流電源装置

画像診断装置用直流電源装置の開発事例です。ご指定の筐体サイズが小さかったため、高圧発生部を絶縁材で充填することで小型化を実現しました。また、電圧急変時に発生するリンギングを皆無とするよう、電圧制御に工夫を施しています。シリアル通信(SPI)機能により、電源電圧のコントロールも可能です。

>>事例の詳細はこちら

 

高圧電源はアイガ電子工業にお任せください!

今回は、高圧電源の代表的な回路方式の特性の違いをご紹介しました。回路方式は「どの課題を解決したいか」によって選定され、要求仕様に応じて組み合わせて構成されます。「どの回路方式を採用すべきかわからない」という段階でも問題ございません。必要な電圧・電流、許容リップル、搭載スペースなどの要求仕様をお伺いし、当社が最適な回路方式をご提案します。

産業用カスタム電源 開発・設計Naviを運営するアイガ電子工業では、高圧電源の開発・設計に対応しています。放電をはじめとする高圧電源特有のトラブルを考慮したうえで、安全性・信頼性を担保した高圧電源をご提案します。高圧電源の開発・設計委託先をお探しの皆様、ぜひお気軽にご相談ください。

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