カスタム電源開発・設計 豆知識
2024.11.19
スイッチング電源におけるトランス設計の基礎:トランス設計の流れと要点
スイッチング電源においてトランスとは、感電を防ぐための入出力絶縁と出力変圧という重要な役割を担っています。一般的にこのトランスの設計にあたっては、コア・ボビンの選定や、巻き数、線径など幅広いポイントを押さえておく必要があります。しかしながら、実際には、本当に重要な要点のみを押さえ、設計を進め、調整・検討を繰り返していくことが最も重要です。そこで、当記事では、スイッチング電源におけるトランス設計の流れと要点をご紹介します。
①仕様確認
具体的には、入力電流、出力電流、入力電圧、出力電圧、効率、耐圧、使用環境、動作周波数などの項目を明確に定義していきます。
②スイッチング方式の選定
明確化した仕様を基に、最適なスイッチング方式を選定します。スイッチング方式の選定方法については、下記記事にて詳しくご紹介していますので、よろしければご確認ください。
③コア・ボビンの選定
コアとボビンは、トランスの性能に直接影響し、変換される電力の容量や使用される線材の太さに大きく依存します。コアやボビンが大型であればあるほど、変換能力が増し、より太い線材を使用できますが、サイズが大きくなってしまいます。そのため、明確にした仕様を総合的に考慮しながら、コアとボビンを選定します。
④巻き数比の設定
入力電力に対しての出力電力を鑑みて、1次巻線・2次巻線の巻き数比を設定していきます。巻き数比の設定については、下記記事をご覧ください。
⑤温度上昇の設定
用途などを鑑みて、トランスの自己発熱をどこまで許容できるかを考慮します。この温度上昇設定に誤りがあると、他部品に熱による影響を与え、要望の使用上限温度を満たすことができなくなる恐れがあります。
⑥絶縁種の設定
設定した許容できる温度上昇を基に、絶縁種を決定していきます。温度上昇と絶縁種の選定は密接に関わってくるため、適した絶縁種の選定が必要です。絶縁種の設定については、下記記事をご覧ください。
⑦鉄損(磁束密度)の計算
鉄損、即ち磁束密度の計算を行います。複数のパラメータを考慮した上で決定しますが、設定した鉄損を超えた場合にはコア・ボビンの再選定が必要になります。
⑧巻き線径の設定
仕様を満足するための電流容量に見合った線材・線径を選定していきます。当然のことながら、線形が太くなればなるほど、大きな電流を流すことが可能となります。また、線形についても、電流値により、丸線・角線・平角線など最適なものを選定します。
⑨銅損(巻き線の損失)の算出
銅損、即ち巻き線の損失を算出します。複数のパラメータを考慮した上で決定しますが、設定した銅損を超えた場合には巻き線径の設定からやり直します。
⑩トランス設計終了・試作へ
設計終了後、実際に試作を作ってみて、設定した値に出ているか入念に性能チェックを行います。
カスタム電源の開発・設計なら、産業用カスタム電源開発・設計Naviまで!
産業用カスタム電源開発・設計Naviを運営するアイガ電子工業では、トランスを含め、カスタム電源の開発依頼を承っています。お客様のご要望であるコスト・サイズ・寿命・求められる特性(過電圧入力・出力過負荷など)などに沿った最適なカスタム電源を開発・設計いたします。電源開発のお悩みは当社までお気軽にご相談ください。
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