カスタム電源開発・設計 豆知識
2025.12.15
カスタム電源で納期短縮を実現するための5つのポイント

弊社へ寄せられるご相談の中で最近増えているのが「早く製品を納めてほしい」という、短納期に関するご要望です。しかし、カスタム電源の開発は通常、設計・試作・評価・製造と多くの工程を要するため、開発期間を大幅に削減することは容易ではありません。
それでも、少しでも開発期間を短縮し、「短納期」を実現するために押さえておくべきポイントがいくつかございます。
そこで今回は、「産業用電源を依頼する際に『納期短縮』を実現するポイント」と題しまして、少しでも納期短縮を実現するために、どのような点を押さえるべきかについて、具体的なポイントを5つお伝えいたします。
カスタム電源で納期短縮を実現するための5つのポイント
カスタム電源において、開発期間を短縮するためには、設計スピードだけでなく、「手戻りを防ぐ」ことと「部材調達を考慮した部品選定」などが重要です。
ポイント①:電源基板設計時に適切な場所に空きパッドを設け、ノイズ対策など設計段階の後戻りを防ぐ
後戻りの無い電源基板設計行うために、シミュレーションで事前に問題を把握するなど様々な対策がありますが、そんな対策の中でも、非常に容易にできるのがノイズ対策・熱対策などを目的として、電源基板設計時に適切な場所に空きパッドを設けておくことです。

図1. 空きパッドの例
あらかじめ空きパッドを設けておくことで、試作後にもしノイズ問題が発生しても、基板を作り直すことなく、空きパッドにフィルタ部品などを実装するだけで対策ができます。対策を行う必要が無い場合でも、ただの空きパッドとしてそのまま開発を進めることができます。
ポイント②:セミカスタム電源によって開発期間を短縮する
セミカスタム電源は、標準電源に対し、周辺回路等を追加するなどして仕様や特性を変更した電源です。セミカスタム電源は、標準電源が基となっているため、カスタム電源と比較して、開発期間・部品調達・製造期間・評価期間も大きく短縮することが可能です。
ちなみに、当社が電源開発を行った事例の中には、カスタム電源では開発期間が10ヶ月かかると想定されていた電源を、納期の関係からセミカスタム電源に変更し、開発期間を5ヶ月短縮したケースもあります。
・カスタム電源:10か月
(仕様確認1ヶ月、設計3ヶ月、部品調達3ヶ月、組立1ヶ月、評価2ヶ月)
↓
・セミカスタム電源:5か月
(仕様確認1ヶ月、設計1ヶ月、部品調達1.5ヶ月、組立0.5ヶ月、評価1ヶ月)

図1. カスタム電源とセミカスタム電源との開発期間の比較
ポイント③:既存電源の「回路図」や「仕様書」を提供し、設計工数を減らす
既設品のモデルチェンジや、他社製電源からの置き換えの場合、使用している電源の「回路図」や「詳細な仕様書」をご提供いただくことが、開発時間の短縮につながります。
新規設計であっても、回路図があるだけで、ゼロから回路構成を検討する必要がなくなり、設計工数を大幅に圧縮できます。現行品の解析にかかる時間を削減できるため、スムーズに試作設計へと移行できます。
ポイント④:リプレース・後継品製作の場合、「現品貸出」で手戻りを防ぐ
回路図や仕様書以外にも、現品をお貸出しいただくことも有効です。仕様書や図面データだけでは読み取れない情報を把握できるため、試作後の手戻りを減らすことに繋がります。
例えば、生産中止品の後継品を製作する場合、図面上で外形寸法が一致していても、実際に組み込むと「コネクタの向きが逆で配線が届かない」「周辺部品が邪魔でドライバーが入らない」といった、構造上の問題が発生することがあります。現品があれば、干渉や作業性まで考慮した設計が可能になります。
また、古い装置で仕様書が無い場合も有効です。現品を解析することで、不明確な仕様を特定できます。さらに、筐体内部が狭くスペースに余裕がない場合も、ケーブルの屈曲や放熱の隙間を実物合わせで調整できるため、「再製作」のリスクを抑えることにつながります。
ポイント⑤:長納期部品を支給し、部材調達のリードタイムを削減する
当たり前のことですが、どれだけ設計がスムーズに終わっても、部品が揃わなければ製造はできません。昨今、特定のICやコネクタの納期が長納期化するといった問題も発生しており、部材調達のリスクを考慮した部品選定も重要です。したがって、長納期部品について、対応可能であれば支給を行うことで、開発期間の大幅な削減を行うことができます。
当社の開発リードタイムを短縮した事例をご紹介!
汎用品を組み合わせた開発リードタイム短縮とコストダウンの実現
カスタム電源を使用していましたが、コストダウンや開発リードタイムの短縮を目指し、汎用のDC/DCコンバータやAC/DCスイッチング電源を使用し、電源装置を製作したいとのご要望を頂戴しました。
本仕様の場合、汎用的なAC/DC電源やDC/DCコンバータを使用することで要求仕様に応えることが可能であったため、開発リードタイム短縮とコスト最適化を実現できるよう、汎用品を組み合わせて設計しました。
産業用電源の開発・設計なら、産業用カスタム電源開発・設計Naviまで
今回は「カスタム電源で納期短縮を実現するための5つのポイント」をご紹介いたしました。当社では、安全性・信頼性を担保した産業用電源の開発・設計など、お客様のご要望に沿ったカスタム電源の開発を得意としております。実際にこれまで、電力・水道・鉄道などのインフラ設備から建設機器・理化学機器をはじめとした産業機器まで、幅広く業界向けに、カスタム電源を開発した実績がございます。今回ご紹介したように、納期短縮を実現するためのご提案の他、信頼性を高めるための回路提案や設計提案も行っておりますので、多チャンネル電源など、カスタム電源の開発・設計委託先をお探しの皆様、是非当社にお任せください。
「スイッチング電源の回路構成と設計方法」ハンドブック無料プレゼント
産業用カスタム電源 開発・設計 Naviを運営するアイガ電子工業株式会社では、電源回路設計・スイッチング電源設計を行うエンジニアの方々に向けWEBサイト上で有益な情報を発信しておりますが、「スイッチング電源の回路構成と設計方法」ハンドブックを刊行し、ご希望される方には無料プレゼントを行っています。少しでもご興味をお持ちの方は、下記リンクよりご確認ください。
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