カスタム電源開発・設計 豆知識
2025.06.20
「緩遮断」を防ぐ電源設計のポイント

カスタム電源の設計段階で、瞬断を考慮していても、電源が「ゆっくり遮断される」状態を考慮せずに設計していたために、瞬断試験で誤動作を引き起こすといったトラブルが少なくありません。
より信頼性を高めた電源設計には、上述の電源がゆっくり遮断されることによるトラブルを防ぐ設計が必要です。そこで今回は、「緩遮断を防ぐ電源設計のポイント」と題しまして、緩遮断によるトラブルを防ぐためにどのような対策を行うべきかをご紹介します。
緩遮断(かんしゃだん)とは
緩遮断とは、電源が完全に遮断されるまでにある程度の時間をかけて電圧が低下していく現象を指します。
一般的な「瞬断」や「高速遮断」とは異なり、緩遮断は電源が数秒~数十秒かけて徐々に電圧降下し、結果的に装置が停止するというケースです。
電源が数秒〜十数秒かけて徐々に電圧降下し、結果的に装置が停止するというケースです。このような緩やかな遮断では、従来の電源回路設計では対応が難しいことがあるため、仕様に合わせたカスタム電源の製作が求められます。
緩遮断を想定していないと、どうなるのか?
設計段階で緩遮断を想定していない場合、例えば、バッテリー切替や制御信号の異常検知が遅れるといった問題が発生します。
当社でも、お客様から「瞬断試験を行ったときにバッテリーへの切り替えがうまくできない」という相談を頂くことがあります。多くの場合、その原因は「緩遮断」を想定した設計になっていなかったことが挙げられます。電源がゆっくりと遮断される際、制御回路がその遮断を「異常」と認識できず、瞬停対策用の切替回路が作動しなかったり、「電源が切れたのに装置は切れたと判断できず、バッテリーへの切り替えが正常に動作しなかった」ためです。
特に、信頼性が求められる産業機器では、上記のようなトラブルが生産ラインの停止、データの破損、装置の誤動作に直結するため、非常にリスクが高くなります。
緩遮断を防ぐための電源設計のポイント
このような事態を防ぐためにまずポイントとなるのが、瞬停回路と電圧監視回路の実装です。
図1. 瞬停回路
瞬停回路とは、電源の電圧が一時的に低下・遮断された場合でも、安定して動作を継続させるための回路で、 UPSの出力が徐々に下がるケースやバッテリー切替までの数ms〜数秒のギャップを補いたい場合にも使用されます。
但し、上述の瞬停回路だけでは緩遮断には対応しきれないこともあります。そのため瞬停回路に加えて、例えば、コンパレータとRCフィルタを用いた電圧監視回路などの、電圧の変化や傾きを検出するための回路を機器の仕様に合わせて組み込む必要があります。
当社では、必要な仕様をお伝えいただければ、上述のような瞬停回路を含め、緩遮断を考慮した回路提案や設計提案が可能です。
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今回は「緩遮断」を防ぐ電源設計のポイントをご紹介いたしました。
当社では、安全性・信頼性を担保したカスタムの開発・設計を行うとともに、お客様のご要望に沿った提案をすることが可能です。実際にこれまで、電力・水道・鉄道などのインフラ設備から建設機器・理化学機器をはじめとした産業機器まで、幅広く業界向けに、カスタム電源を開発した実績がございます。今回ご紹介したように、信頼を高めるための回路提案や設計提案も行っておりますので、カスタム電源の開発・設計委託先をお探しの皆様、是非当社にお任せください。
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