カスタム電源開発・設計 豆知識
2024.12.24
高圧電源設計の基礎:コッククロフトウォルトン回路

高圧電源とは数kV以上の高い電圧を発生させる電源を指します。一般的な民生機器、産業機器等は、基本的に出力電圧が24Vや48Vといった低電圧で動作しますが、用途によっては、100V、200Vなどといった高電圧を求められることもあります。しかし、質量分析、X線検査装置、科学実験等をはじめとする特殊な用途では、上述以上の数kVなどの電圧が必要となる場合があります。このようなケースで必要とされるのが高圧電源です。
当記事では、高圧電源設計の基礎と題しまして、高圧スイッチング電源に最も多用されている回路方式であるコッククロフトウォルトン回路について、ご紹介します。
コッククロフトウォルトン回路の原理
コッククロフト・ウォルトン回路とは、コンデンサとダイオードを多段式に組み合わせて構成することで、低電圧の交流電源を高電圧の直流電源に変換する回路です。
各段はトランスの2次電圧に昇圧され、保持電圧はさらにn段まで昇圧されます。最初の電流I1がD1を通してC1に充電されます。次にC1に充電された電荷がD2を通してC2にI2の電流が流れ、C2が充電されて電圧は2倍になります。これを「コッククロフト・ウォルトン回路の2段昇圧」といいます。
この動作を繰り返してI3が流れ、またI4が流れ…、下記回路ではトランスの2次電圧を6倍電圧に昇圧できます。「コッククロフト・ウォルトン回路の6段昇圧」さらに高い高電圧を作るには、 このコッククロフト・ウォルトン回路の段数を増段することで偶数倍に昇圧できます。
高圧電源の開発・設計事例をご紹介
大型分析装置用直流電源装置
大型分析装置用直流電源装置の設計開発事例です。 出力電圧が-8kV~+8kVと高電圧であり、湿度をはじめとした周囲環境の影響により、電源電圧が変動してしまう懸念があり、対策を施した電源装置を開発したいとのご要望がありました。
湿度の影響を受けないように、基板をステンレス筐体の中に格納し、基板周囲を絶縁材でポッティングして、電源電圧への変動懸念に対応しています。また、ポッティングの際に気泡が含まれると吸湿の恐れがあるため、ポッティング材を脱泡機にかけて対策を行ったうえで加工しています。基板をステンレス筐体の中に格納することで、作業者が物理的に基板にアクセスできなくなり、安全性を高めている点も当事例の特長になります。
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