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2024.09.01

スイッチング電源のトランス設計の基礎:損失について

スイッチング電源に於いてトランスとは、感電を防ぐための入出力絶縁と出力変圧という重要な役割を担っています。
高周波スイッチングによりトランスは大幅に小型化が可能となりましたが、トランスの内部損失を十分に理解し、小型化につなげる必要があります。そのためには、鉄損と銅損の双方を考慮して、トランス設計を行うことが重要です。そこで、当記事では、トランスの主な損失、鉄損、銅損の詳細、損失の最小化について解説します。是非最後までご覧ください。

(1)鉄損(コア損失)

①ヒステリシス損

コアへのエネルギー入出力に生じる磁束密度B-磁界強度Hのヒステリシス損失です。面積が小さい程、損失が改善されます。

②渦電流損

磁束の変化によって起電圧が生じ、磁性体コアの中に電流が流れるのが渦電です。渦電流が流れることによって、コアの抵抗との間に抵抗損が発生します。これが渦電流損です。磁性材料の粒子が絶縁されていると、渦電流はあまり流れないので渦電流損は少なく改善されます。

③残留損

磁界をゼロにしてもコアに磁束が残っている状態でB-Hヒステリシスが大きくなります。ヒステリシス損同様に面積が小さい程、損失が改善されます。

以上のことから、コア材質、サイズ選定に大きく左右されるため十分な検討が必要となります。

 

(2)銅損(巻線損失)

①直流抵抗損

巻線の銅線に流れる直流電流によって生じる損失です。銅線径の抵抗率、ボビンの平均巻線長に左右されるため、最適な線径、巻数の設定で損失が改善されます。

②表皮効果損

導体を高周波電流が流れる時、電流密度が導体の表面で高くなり、中心にいくに従って低くなる現象です。この表皮効果によって増加損失を表皮効果損です。電線の線径が太ければ太いほど表皮効果は大きくなるため、線径を細く複数巻で損失が改善されます。

③近接効果損

近接して高周波電流が流れる互いの導体に対し、片方に流れる電流で発生した磁束によって、もう片方には渦電流が流れます。流れる電流の密度が片側に偏ってしまうロス損失です。1次、2次巻線の巻き方サンドイッチ巻きの工夫で損失が改善されます。

④漏れ磁束効果損

トランスに漏れ磁束があると、漏れ磁束によって銅線が発熱し損失します。コアのエアギャップから出る漏れ磁束が強く、銅線を横切るとそこに大きな渦電流が発生します。最適なコアのセンターギャップ又は、スペーサギャップで改善されます。

⑤巻線ループ損

トランス巻き線を1本では電流容量が不足する場合、何本か並列に巻き線することになりますが、その巻き線における起電圧は細かく見ると、少しずつ違っています。その電圧の違いによって循環電流が流れる為ロスが発生します。このように巻き線が並列接続され、ループ状になった時の循環電流による損失を巻き線ループ損と言います。並列にすると巻き線におけるループ損が発生し、直列にすると巻き線が太くなるので表皮効果損が増えます。巻き数や電線径によって、どちらが良いか変化します。

損失の最小化

以上のことから、トランスの損失は線材径、巻線の巻き方に大きく左右されるため十分な検討が必要となります。この鉄損と銅損の関係は、トレードオフの関係にあります。具体的には、下図の通り双方のバランスした状態だと、総合損を最小化することができるのです。つまり、鉄損・銅損のバランスを考慮した上で、トランス設計にあたることが非常に重要となります。

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