特注のスイッチング電源の開発/設計・製造ならお任せください。

カスタム電源開発・設計 豆知識

2024.05.28

力率改善回路の方式

スイッチング電源の性能・スペックを表現する指標としては、入力電圧範囲・出力仕様・効率・力率・チャンネル数・電源サイズ・適用規格をはじめ、様々なものがあります。当記事では、これらの様々な指標の中で力率に焦点を当て、力率向上を実現する力率改善回路を詳しくご紹介します。

力率とは?

力率とは、入力供給電力が有効に働いた電力の割合を示すものです。一般に有効電力と呼ばれ、無効電力が入力供給電力の無効の割合となります。その無効電力の原因となるのは、電源内部入力のコイルやコンデンサの影響です。

・交流電圧に対して、コイルの場合、入力電流が90°遅れる
・交流電圧に対して、コンデンサの場合、入力電流が90°進む

これは、位相のズレによるもので、ズレが大きいほど力率が悪化するのです。

力率改善の原理

上述の通り、電源装置は入力平滑コンデンサにより入力電流が進む傾向にあります。簡易的な改善として入力ラインにコイルを挿入、調整し位相改善をするなどの方法があります。根本的に力率を改善するには、位相ズレを補正、制御する力率改善回路を追加し、電流波形を正弦波に近づける必要があります。

力率が悪いと、電源高調波電流の波形歪等により、入力給電側や電源内部への様々な弊害が発生し送配電設備を損傷させるなどの問題が発生する可能性があります。

一般的な電源のコンデンサ入力型整流回路の入力電圧、電流波形を下記に示します。入力電流は入力電圧のピーク時に流れるだけであり、高調波電流成分が発生し、力率を低下させます。

力率改善とは、電圧波形と電流波形の位相ズレの改善することです。電流波形を制御して電圧波形と同相に近づければ力率は理想の1となります。

 

力率改善回路(PFC回路)

この力率を改善するために用いられるのが、力率改善回路(PFC回路)です。この力率改善回路の方式は大きく下記に分類されます。

簡易的

1.パッシブ方式
→電源に直列にリアクトルを挿入するタイプ

2.部分スイッチング方式
→倍電圧整流回路とともに併用されるタイプ

電流制御

3.スイッチング方式

①連続通電モード(CCM)
→スイッチング用リアクトルへの電流を連続して通電するタイプ

②臨界通電モード(CRM)
→電流がゼロのときスイッチングデバイスをターンオンするタイプ

③不連続通電モード(DCM)
→通電電流がいったん途切れる不連続タイプ

ここでは、電流制御によるスイッチング方式に焦点を当てます。各力率改善回路の電圧波形と電流波形の関係は下図の通りです。

①連続通電モード

②臨海通電モード

③不連続通電モード

電流制御によるスイッチング方式における特徴は下表となります。

電流制御モード 出力容量 制御方法 特長
連続通電モード 300W以上 パルス幅変調 周波数は固定のままパルス幅を 変化させて出力電圧を制御する方法
・通電電流のリップルが小さい
・電流ピーク値が小さい
・パルス幅変調のため、スイッチング素子 の損失が大きい
・インダクタンスが大きい
臨界通電モード 200W程度 パルス周波数変調 パルス幅は固定のまま周波数を 変化させて出力電圧を制御する方法
・通電電流のリップルが大きい
・電流ピーク値が大きい
・ゼロ電流スイッチングのため、損失が小さい
・インダクタンスが小さい
・スイッチング周波数変調のため、ノイズが大きい
不連続通電モード 100W程度 パルス周波数変調 パルス幅は固定のまま周波数を 変化させて出力電圧を制御する方法
・通電電流のリップルが大きい
・電流ピーク値が大きい
・ゼロ電流スイッチングのため、損失が小さい
・インダクタンスが小さい
・インダクタ電流が小さい
・スイッチング周波数変調のため、ノイズが大きい

基本的には、出力容量に応じて、どの方式にするか決定します。ただし、求める用途に沿って、メリット、デメリットを考慮しながら、選定することも重要です。ちなみに、制御ICは国内外で数多く市販されておりますので、是非一度お試しください。

関連する豆知識一覧