カスタム電源開発・設計 豆知識
2022.05.08
カスタム電源と市販電源の違い
カスタム電源と市販電源の違い
市販電源は、一般的市場動向に見合った仕様、環境・パッケージ・価格等が決定された電源から、顧客が用途に近い電源を選択します。この為、決められた電源の中からしか選定できず、顧客の要求に全て対応することができません。
そもそも、市販電源は数多く販売することを目的としていることが多いため、コストを安く、効率はそこそこという製品になりがちです。出力スペックがカタログには100Wと記載されていても、実際の使用では強制空冷しないと使えないことが多く、自然空冷で使用する場合は1サイズ(120W)や2サイズ(150W)大きな、必要以上のスペック品でないといけません。
ノイズ規格準拠や入力保護・電圧保持の為には、推奨の外部回路及び部品を追加で設ける必要があり、市販電源単体では顧客が要求するスペックを満足しないことがほとんどです。
カスタム電源では、顧客の装置・仕様に合せて設計・製造される特注品で、市販電源にはない過酷な環境・パッケージ・精度・寿命・外部信号・外来ノイズ・小ロット製作等さまざまなご要求に対応できることが可能です。また、自社で設計・製造・検査まで一貫して行っている為、オーバーホール・修理を含め、安心してご使用頂けます。出力スペックも100Wであればそのまま100W使用することが可能ですので、必要以上のスペック品を購入する必要がありません。
ノイズ規格準拠や入力保護にも対応しており、外部回路や部品を追加する必要がなく、カスタム電源単体でそのまま使用することが出来ます。それらを満足する為にも部品の使用方法・回路構成を十分理解することも重要となります。
顧客からの要望を全て満足させる電源を、実現可能であることがカスタム電源の強みとなります。
カスタム電源と市販電源の比較
カスタム電源と市販電源の比較を下表に記載します。
■ 各項目で比較
項目 | カスタム電源 | 市販電源 |
---|---|---|
仕様、環境 | 任意設定 | 固定 |
パッケージ・サイズ | 任意設定 | 固定 |
インターフェース | 任意設定 | 固定 |
入力源 | AC/DCワイドレンジ | AC又はDCのみ |
出力 | 任意設定 | 電圧/電流固定 |
寿命 | 15年長寿命 | 3年~5年程度 |
オーバーホール/修理 | 対応 | 不可 |
ライフサイクル | ロングサイクル | ショートサイクル |
価格 | やや高価(仕様による) | 安価 |
生産ロット | 小ロット(1台から対応) | 大ロット |
その他 | 寒冷地や高温度・耐振動対応 | - |
■ 回路構成で比較
・市販電源
・カスタム電源
カスタム電源の一例
ここからは、カスタム電源の例をご紹介します。
■発電所向けAC/DC入力電源装置
【仕様・特長】
・サイズ,PKG 47.5mm × 314mm × 230mm
・多CH出力対応
・VCCI,IEC規格準拠等
・長寿命,寒冷地や高温度
・耐振動対応
・アラームや状態信号出力
■通信基地局用AC/DC入力電源装置
【仕様・特長】
・サイズ,PKG 40.3mm × 261.75mm × 247mm
・ワールドワイド電圧入力対応や直流入力
・多CH出力対応
・VME,VCCI,IEC規格準拠等,高調波電流抑制や高力率対応
・長寿命,寒冷地や高温度
・耐振動対応
・アラームや状態信号出力
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