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2026.02.19

産業用電源の「定電流制御」精度を高める回路設計のポイント

一般的な産業用電源は、電圧を一定に保つ「定電圧制御」が主流です。しかし、メッキ処理、レーザー加工、あるいはEV向け二次電池の検査装置など、機械装置が担うプロセス品質を担保するために「電流」を一定に保ち続けることが不可欠な用途があります。

この産業用電源における「定電流制御」は、定電圧制御と比較して難易度が高くなります。ではなぜ定電流制御が難しいのか。

それは、負荷が激しく変動しても、瞬時に電圧を調整して、電流値をミリ秒単位で維持し続けなければならないからです。そしてこの電圧調整を難しくしているのがコンデンサです。通常、コンデンサは電圧を安定させるために働きますが、定電流制御ではその性質に逆らって、負荷変動に合わせて電圧を強制的に変化させ続けなければならないからです。

定電流制御が上手くいかないと、例えばめっき装置の場合、めっきのムラの発生に直結しますし、LED照明では輝度がチラつくなどの原因になります。つまり、定電流制御の精度は、装置が動作するプロセスに直結するため、定電圧制御以上に高精度が求められるのです。

では、負荷が激しく変動しても電流を一定に保つ高精度な定電流制御を実現するには、どのような回路にすればよいのでしょうか?

今回は、定電流制御について回路方式を交えながら、定電流制御の精度を高めるためのポイントについて解説します。

 

 

定電流制御の2つの電流検出方式

定電流電源の基本は、出力電流を正確に読み取り、その値を制御回路に戻して出力を調整することです。この「電流をどう読み取るか」には、大きく分けて2つの手法があります。

①抵抗検出方式

回路に直列に低抵抗を挿入し、その両端の電圧降下を測定して電流値に換算する方法です。ドロッパー方式などのリニア電源や、小容量のスイッチング電源で用いられている基本的な手法です。

図1. 抵抗検出方式

抵抗検出方式は、回路構成がシンプルで、直流を直接検出できる点が特徴です。しかし、大電流の制御には適していません。 大電流になるほど抵抗での発熱が大きくなり、効率低下を招くためです。また、この発熱は抵抗値そのものを変化させてしまうため、結果として電流の検出精度が不安定になるという欠点もあります。

 

②カレントトランス(CT)方式

スイッチング電源などの交流成分が流れる箇所にカレントトランス(CT)を配置し、電流を検出する方法です。効率を重視する産業用電源で多く採用されています。

図2. カレントトランス方式

カレントトランス方式は、電力損失が非常に少なく、発熱を抑えられるため、大電流の用途に適しています。また、主回路と制御回路を絶縁できる利点もあります。

一方で、直流そのものは検出できないため、スイッチング波形の電流を読み取って平均化するなどの対策が必要です。また、カレントトランス自体のコア特性(磁性)が精度に大きく影響します。

 

定電流制御の精度を高めるためのポイント

負荷が激しく変動しても、一定の電流値を保ちつづける高精度な定電流制御を実現するには、どのようにすればよいのでしょうか。産業用電源メーカーを選定する際や、仕様を検討する際には、特に以下の「カレントトランスの選定」と「フィードバック制御」の質に着目する必要があります。

 

① カレントトランスの選定について

カレントトランス方式は抵抗方式に比べて設計難易度が高く、ただカタログスペック上の部品を選んで実装すれば精度が出るというものではありません。特に、下記2つのポイントに注意することが必要です。

 

ポイント①:残留磁束密度の小さいコア選定し、十分なマージンを確保して磁気飽和を防ぐ

スイッチング電源の電流検出で注意すべき点は、電流がプラスマイナスに入れ替わるきれいな交流ではなく、一方向に断続的に流れるパルス状であるケースが多いことです。 このような電流をカレントトランスに通すと、コア内部で磁気がリセットされずに一方的に蓄積されやすい状態(偏励磁)となります。

もしコア選定や設計が不適切だと、蓄積された磁気が飽和磁束密度を超えた「磁気飽和」を起こしてしまいます。飽和すると、正常な電流波形を出力できなくなるばかりか、インダクタンスを失って回路ショートのような状態となり、最悪の場合は電源の焼損事故につながります。

これを防ぐためには、まずは、電流OFF時に磁気が溜まりづらい「残留磁束密度の小さい」コア素材(磁性材料)を選定することが第一です。その上で、さらに重要なのが、設計段階での磁束密度のマージン確保です。磁性材料は、高温になると容量の限界値が低下する特性があります。そのため、常温時のスペックだけで設計するのではなく、搭載する装置内の温度上昇や突発的な過電流までを計算に入れ、使用する磁束密度を限界値に対して十分に低く抑えるといった、安全マージンを確保した設計を行うことが求められます。

 

ポイント②:スイッチング周波数に適した磁性材料を選定し、波形を正確に捉えるCT回路を設計する

産業用電源は、装置の小型化や高応答性を実現するためにスイッチング周波数の高周波化が進んでいます。そのため、CTのコア材には、この高速な電流変化に正確に追従できる周波数特性」が求められます。

もし、周波数特性が不十分な汎用コアを使用すると、以下のようなトラブルを引き起こします。

「高速なパルス波形に追従できず、実際の電流値と検出値の間に誤差が生じる」

「追従できなかったエネルギーが熱に変わり、カレントトランス自体が異常発熱する」

高精度な定電流制御を実現するためには、抵抗値だけでなく、磁気特性を理解した上で、磁性材料を周波数帯域に合わせて選定する必要があります。

 

② フィードバック制御について

高精度の定電流制御を実現するためには、フィードバックループの質を高めることが重要です。そのためには、特に以下の3つのポイントを押さえることが必要です。

 

ポイント①:スルーレートや帯域幅を考慮し、高速追従が可能なオペアンプを選定する

負荷が急激に変動した際にアンプの反応が遅いと、オーバーシュートやアンダーシュートが発生することがあります。この対策として、スルーレートや帯域幅を考慮し、高速・広帯域に対応したオペアンプの選定を行うなど、高速追従を可能にする設計を行うことが必要です。

ただし、反応を速くしすぎると逆に制御が過敏になり、ハンチングするリスクがあるため、部品選びだけでなく、オペアンプ周辺のコンデンサや抵抗値を最適化し、「速さ」と「安定」のバランスをとることが重要です。

 

ポイント②:フィルタ回路の実装や基板パターンを最適化し、ノイズによる誤動作を防ぐ

スイッチング電源内部のノイズが、微弱な検出信号ラインに乗ると誤動作の原因となります。

 これを防ぐため、ローパスフィルタなどでの適切なフィルタリング回路の実装はもちろん、基板設計の段階で、大電流ラインと信号ラインを物理的に分離するなどのノイズ対策を行うことが必要です。

 

ポイント③:温度ドリフトの小さい高精度ICを選定し、環境温度が変わっても変動しない基準電圧を確保する

そもそも、基準電圧そのものが変動しては意味がありません。高精度が求められる場合には、温度ドリフトの極めて小さい高精度シャントレギュレータや専用ICを選定し、環境温度が変わっても出力電流が微動だにしないよう安定性を確保することが必要です。

 

 

そして、下記図3は定電流機能を持つ電源回路の例です。

赤枠部が定電流制御回路に該当し、この回路で電流値の検出・フィードバック・制御を行っています。今回の回路構成では抵抗検出方式となっています。

 

図3. 定電流制御の回路構成の全体像

 

今回ご紹介したポイントを抑えることで、負荷が変動しても電流値が変動しない定電流制御を実現することが可能です。

 

 

産業用カスタム電源の設計・製造はお任せください!

今回は「定電流制御の精度を高める回路設計のポイント」についてお伝えいたしました。

高効率化が進む中で、大電流かつ高精度な定電流制御を実現するには、汎用電源の機能では限界があります。 特に、CTの磁気飽和対策や、高速応答と安定性を両立するフィードバック制御には、アナログ技術に精通したノウハウが不可欠です。

当社では、今回ご紹介した技術ポイントをすべてふまえた上で、お客様の仕様に合わせた産業用電源の設計・製造を行っています。

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