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カスタム電源開発・設計 豆知識

2025.10.27

スイッチング電源とドロッパー電源の採用判断基準

ドロッパー電源はノイズ特性に優れますが、昨今はスイッチング電源も低ノイズ化しており、産業用カスタム電源は、現在スイッチング電源が主流となっています。しかし、全ての設計においてスイッチング電源が最適というわけではありません。設計条件や用途によっては、ドロッパー電源を採用した方が良い場合もあります。

ドロッパー電源とスイッチング電源は、動作原理が大きく異なり、効率や電力損失、ノイズ耐性、サイズやコストを中心に大きな違いがあります。

そこで本記事では、それぞれの電源方式の違いをまとめた上で、どのような判断基準に基づいて、使い分けるべきかについて解説いたします。

 

スイッチング電源とドロッパー電源の比較

ドロッパー電源とスイッチング電源は、動作原理が根本的に異なり、その特性は対極的です。それぞれの違いと採用における判断基準を「効率」「ノイズ特性」「サイズ・重量・コスト」の観点から説明いたします。

①効率と電力損失の比較

スイッチング電源とドロッパー電源の動作原理・効率・電力損失を比較した表が下記になります。表1のようにスイッチング電源は、ドロッパー電源と比較して、電力損失が少なく、高効率という特徴があります。

 

表1. 効率と電力損失の比較

比較項目 スイッチング電源 ドロッパー電源
動作原理 ON/OFFスイッチングを利用し、パルス幅変調(PWM)等で制御 トランジスタを制限抵抗として使用し、ドロッパ素子で電圧を降下
効率 効率が高い(70%以上を実現) 効率が低い(大容量では30~50%程度)
電力損失 損失が小さく、発熱も少ない 電力損失が大きい

 

②ノイズ特性の比較

スイッチング電源とドロッパー電源のノイズ特性を比較した表が下記になります。表2より、ドロッパー電源の方がノイズ特性に優れ、応答速度が早いという特徴があります。

表2. ノイズ特性の比較

比較項目 スイッチング電源 ドロッパー電源
リップル・ノイズ スイッチング動作により高周波雑音が発生するが、対策により低減可能 リップル・ノイズが少ない。安定性が高く、低雑音にも対応。
応答速度 制御ループの設計に依存するため、条件によって変化 制御が連続的かつシンプルなため、高速

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③サイズ・重量、コストの比較

スイッチング電源とドロッパー電源のサイズ・重量やコスト面を比較した表が下記になります。表3より、スイッチング電源はドロッパー電源と比較して、小型化が可能です。コスト面については、製作する電源の仕様によって最適かどうかが異なります。ドロッパー電源は、サイズが大きくなりやすく、小容量の場合に、コストを抑えることが可能です。

表3. サイズ・重量、コストの比較

比較項目 スイッチング電源 ドロッパー電源
サイズ・重量 高周波化によりトランスやフィルタの部品が小型化され、小型・軽量化が進んでいる 大量の熱を放熱するための部品(ヒートシンクなど)が必要なため、サイズが大きくなりやすい
コスト 大容量(100VA以上)の場合、ドロッパー電源より安価 小容量(10VA以下)の場合、スイッチング電源より安価

 

スイッチング電源とドロッパー電源の使い分け

スイッチング電源とドロッパー電源はそれぞれ下記のような場合に使用されます。

・スイッチング電源

①高効率・大電力が求められる場合

電力損失が少なく、高効率であるため、大容量や大電力が必要な場合に採用されます。発熱が少なく抑えられるため、システム全体の熱設計が容易になります。

②小型化・軽量化が必要な場合

電源の小型化・軽量化が必要なモバイル機器、PC、家電製品などの一般電子機器で広く採用されています。

③大容量の場合

高効率であるため、出力容量が100VAを超える場合、ドロッパー電源と比較して安価になります。

 

このようにスイッチング電源は、大電流が必要な場合、小型化・軽量化が求められる場合で特に使用されます。また従来はドロッパー電源がほとんどだったノイズに厳しい用途でも、低ノイズのスイッチング電源が使われています。当社でも低スイッチング電源としてノイズに厳しい用途で採用されており、例えば、画像診断などを行う機器でも当社のスイッチング電源が採用されています。

>>低ノイズスイッチング電源についてはこちら

 

・ドロッパー電源

①ノイズ抑えたい場合

スイッチング電源と比較して、ノイズ耐性があり、ノイズにシビアな用途で採用されます。具体的には、電源ノイズが直接信号品質に影響を与える、高精度な計測機器、アナログセンサ、医療機器、高級オーディオ回路などで使用されます。

②電圧安定性を確保したい場合

応答速度が速いという特性から、負荷変動に対する電圧安定性を瞬時に確保したい場合にドロッパー電源は有効です。

③小容量かつ入出力電圧の差が小さい場合

入出力電圧差が非常に小さく小容量の場合、電力損失を抑えることができます。また、出力容量が10VA以下であれば、スイッチング電源よりも費用を抑えることができます。

 

このようにドロッパー電源は、ノイズを抑えたい場合、電圧安定性が求められる場合、小容量の場合で特に採用されます。

実際に当社では、高周波回路のノイズを抑制するために、下記のようにドロッパー電源を採用した事例があります。

ドロッパー電源を採用し高周波対策

>>ドロッパー電源を採用し、高周波回路のノイズを抑制はこちら

本事例は、超音波探査機に使用する電源装置の開発において、高周波回路が使用されるため、ローノイズであるドロッパー電源を採用した事例です。このようにお客様のご要望や仕様条件によって、スイッチング電源ではなく、ドロッパー電源のご提案も可能です。

 

スイッチング電源・ドロッパー電源の開発・設計なら、産業用カスタム電源開発・設計Naviまで

今回はスイッチング電源とドロッパー電源の採用判断基準について、「効率」「ノイズ特性」「サイズ・重量・コスト」の観点から、それぞれの電源方式の比較と採用における判断基準をご紹介いたしました。この判断基準に基づき、必要な性能や予算感を鑑みて電源方式の決定を行うことで、より最適な製品設計を行うことができます。

当社では、安全性・信頼性を担保したカスタム電源の開発・設計など、お客様のご要望に沿った電源の開発を得意としております。実際にこれまで、電力・水道・鉄道などのインフラ設備から建設機器・理化学機器をはじめとした産業機器まで、幅広く業界向けに、カスタム電源を開発した実績がございます。またその実績とノウハウから、お客様のご要望を実現するための設計提案から行うことも可能です。低ノイズスイッチング電源・ドロッパー電源など、「こんな電源は製作できないか」「カスタム電源の開発・設計委託先を探している」といったお悩みをお持ちの方は是非当社にお任せください。

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